THE DAY AFTER THE CRISIS.


東京で、異界の門が開いたのが、今から二年前。
三ヶ月程でその門は、とある協会理事を中心に極秘裏に封印されたという。
けれどそれは完全ではなく、今でも門は薄く開いた状態が続いているらしい。
その為、東京の協会本部のエリート達は、完全な封印の方法を形振り構わず模索しているという、まことしやかな噂。
その真偽を確かめる術は、今は無い。

実際に門が開いたのは東京だったが、その影響は全国に伝播した。
この世ならざる者たちの勢力は増し、魑魅魍魎は跋扈し、一部の者たちの目には、さながら平安の時代に戻ったかのような光景が映った。
それでもほとんどの人間にとっては大して変わりない日々で、ただ、能力者と呼ばれる者たちの生活だけが一変した。

能力者とは、普通の人間とは異なった「力」を持つ者たちの総称。
霊能力者と置き換えても良いが、その仕事は除霊だけに限らず、妖怪・悪魔のような、より凶悪なモノを相手にすることも多々ある。
そんな強力な能力者たちを統率するのが協会である。

門が開いてからというもの、協会はそれを閉じようと躍起になり、同時に勢力を増した闇の者たちとの争いも激化した。
結果として、運と力の無い能力者は淘汰され、一定以上の力を持つ能力者の経験値を上げさせた。
その流れは今も続いている。

戦渦の中心は東京であったが、その「双子」である京都も酷い状況だった。
東京の協会本部に実力ある戦い慣れした能力者が多く所属していたのに対し、京都の支部は、堅固な護りはあったが、その結界を破られると途端に対抗策を無くした。
実戦向きの能力者が、東京に比べて少なすぎたのが、その原因だ。

都を明け渡さず、災厄のピークを乗り切ることには成功した。
しかし、それまでヒトにも闇にも中立であった京古来の第三勢力、天狗たちが台頭することになり、古都の「裏側」はヒトと天狗とに二分された。
以後、鞍馬を中心とする京都市街北部は彼ら天狗の支配圏となり、能力者たちは容易に踏み入ることができなくなった。


東京で異界の門が開いてから二年。
当時も今も、俺は変わらず此処、京都に居る。