01.はじめまして
「おにーちゃん、だぁれ?」
「僕は……君の味方だよ」
そう言って彼は自分の頭の上に優しく手を置く。
「おとーさんのおともだち?」
「うん、そう。お父さんに頼まれて君の所に来たんだ」
無邪気な問いに、何故か彼は悲しげな表情を作った。
その理由は、もう覚えていない。
出会ったのはいつのことだか覚えていない。
けれど、物心ついた頃には、彼は既に自分の傍にいた。
それが当たり前のことだったからなのか、それとも、自分だけで「彼ら」と相対することが怖かったからか。
彼が去った時、自分は恐怖し、泣き叫んだ。
ただその感情も成長するにしたがって薄れ、もしくはそれが新たなる当たり前になり、そして泣かなくなった。
自分は独りでも闘える。
それが難しいことは程なく理解したが、彼と再会する迄の短くない間、この言葉は真幸にとってのただ一つのおまじないの言葉だった。