横たわる身体に馬乗りになり、押さえ付ける。
まとう薄物から覗く肌は白く、腕は細い。
「悠、斗……?」
首筋に指が絡む。
唇が薄く開き、そこから吐息が零れる。
「んっ……」
真幸の瞳からは涙が盛り上がり、滴り落ち、悠斗の頬を流れる。
伸ばした腕には全体重がかかり、息吹を殺してゆく。
「嫌……っ!」
それでも手は吸い付いたように首から離れない。
鎖が重く絡まり、その身を縛り付ける。
背中を滑る冷たい汗は、布を肌に吸い付ける。
身を屈めると、細い髪が降り注ぐように悠斗の顔にかかる。
振り払いもせず、悠斗はソレを指に絡めて口付ける。
そして力無く地に落ちる。
くぐもった悲鳴が低く、真幸の口中で響いた。
遺されたモノは、熱を持たぬ一つの躯。
■□■□■
独り、覚醒す。
薄暗い見慣れた天井には、小さな室内灯が一つ。
遠くで風の吹く音が耳に届く。
汗はかいていないが、酷く心臓が走っている。
渇きを癒そうとシーツから抜け出せば、隣室には見慣れた人影。
「なんだ、起きたのか?」
「…………夢を見た」
思い立ち、足の向きを変える。
ソファに深く身を沈めた彼の膝の上に乗り、首筋に両手を添える。
先刻の幻視と同じ様に。
手の平の下で脈打つ、生きている証。
「真幸……?」
自分には出来ると思っていた。
それなのに腕に力はこれっぽっちも入らず。
ただ、涙が零れ落ちたことだけは何も変わらなかった。
「……とても、嫌な夢を見たの」
悠斗は真幸を抱き込んで、優しく頭を撫でる。
その肩に顔を押し付けながら、真幸は小さく呟いた。
「アンタを殺すのは私だと思ってたのに」
そ れ は 酷 く 甘 美 な 誘 惑 で あ り な が ら
酷 く 残 酷 な 現 実 で も あ り
結 論 か ら 言 う の で あ れ ば
貴 方 が 死 ぬ 時 は
私 も 一 緒 に 殺 さ れ な け れ ば な ら な い の で す