ナンバリング


「セイって、料理上手よね……」

何故か我が家のキッチンに立っている長身のセイの後姿を見ながら、私はダイニングテーブルに頬杖を付いた。

「そうですか?」

「そうです」

セイの作る料理は美味しいから、好き。
料理って自分で作るより他人に作ってもらった方が美味しく感じる。
それが「他人」だからか、それとも「セイ」だからか。
その判断は一応保留にしておくけど。

立っているセイの後姿は、スラッとしていて格好良い。
身長差がありすぎて私のエプロンなんか使えないから、彼はエプロン無し。
そのうち、彼専用のエプロンがこの家に常備される方に三千点。

当然のことながら、私はセイの顔が好き。
笑った顔だとか、真面目な顔だとか。
困った顔も好きだけど、別に彼を困らせることは趣味じゃない。

そして変なことを言うようだけど、彼の手が好き。
元々の体格差のせいか、私の手をすっぽりと包み込んでしまう大きな手、長い指。
男の人にしては白くてキレイな手は、今は包丁を握っている。

性格は?
Yes,of course.

「どうしたんですか?」

突然黙りこくってしまった私を気にしてか、セイはお鍋の火を止めて私の方にやって来た。

「別にたいしたことじゃないんだけど……」

そう前置きしながら、私はセイの手を取った。

「セイのこと、好きだなって思って」

私の知る限り、全てのことが。
どこが一番なんて、順位をつけられるはずがない。
私の中にあるセイの全てが、私にとって「一番」

「あの、それは『たいしたことじゃない』んですか……?」

「今の私はお腹が空いてるの」

照れ隠しだったのは見抜かれただろうか?

セイは私の頭を二・三度軽く撫でて、キッチンに戻っていった。
今度は私もついていって、彼の左隣から顔を覗き込む。

「……でもやっぱ、顔かな」

「…………はぁ」


前言撤回。
困った顔が見たいが故、彼を困らせるにやぶさかでない。